「噛んでも嚙みきれない味わい深さ」と犬童一心が評する 映画『静かに燃えて』、3月1日から期間限定上映

2025年3月1日から、小林豊規監督の長編映画『静かに燃えて』が期間限定で上映される。

映画『静かに燃えて』予告編

小林豊規監督は、中学生にして8mmフィルムで劇映画を監督制作し、東京造形大学時代に撮った「マルボロの香り」がʼ82年度富士8ミリコンテストで学生優秀賞を受賞。TV番組やプロモーション映像・CM等映像作品の演出を続け、長編映画を製作・監督して初公開からひと月半後に急逝した。上映期間中に、出演者、盟友・犬童一心監督によるトークショーも予定されている。

小林豊規監督の長編映画『静かに燃えて』ポスター画像

コメント
映画監督 犬童一心(『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』ほか)
「噛んでも噛みきれない味わい深さ」この監督、女性が女性に少しずつ惹かれ、身悶えていく様を慌てず騒がず舐めるように見つめている。どこか、監督個人の性癖がじっとりと滲むようだ。ヒッチコックがサスペンス映画だと言い張って、金髪美女をいじめ抜いて身も心も真っ赤に燃えているのが隠しきれていない状態を思い出す。監督は初長編なのに64歳。まさに谷崎潤一郎的な味わいとも言える。やっと60歳を越え初長編を撮ったら、性癖がダダ漏れだわ、一体昭和何年だみたいな世界。困ったやつだが、その正直さ故に噛んでも噛みきれない味わい深き世界を生み出した。が、小林はもいういない。急死した。半世紀に渡って映画と戯れ、やっと花開いたら、開きっぱなしで公開も途中なのに忽然と消えてしまった。次回作が楽しみだ、なんて、もうそんなこと言っても詮無いんだな。サヨウナラ。

声優 山口由里子(『ワンピース』ニコロビン ほか)
いい映画だと思いました。主人公の容子ちゃんの存在感も大きいけれど、役者さん皆さんの佇まいや表情、背景、全ての描写が繊細でとても好きです。

脚本家 池野みのり(『ちびまる子ちゃん』『しばわんこの和のこころ』ほか)
『静かに燃えて』のタイトルに納得。セリフがなくても伝わる丁寧な映像表現が心地よかった。

作家 坂本俊夫(著書『おてんとうさんに申し訳ない 菅原文太伝』ほか)
テラスハウスに同居する二人の女性の関係がどう発展していくのか、何となく予想できた。しかし、もう一組の住人である姉と弟がこの二人とどうかかわってくるのか、なかなか観客に教えてくれない。また、あれっと思うような「小道具」が時たま現れ、見る者を惑わせる。どうしてだろう、何の意味だろうと、次のシーンを期待しつつ、主人公の恋心を軸に静かに進む映像を追いかける。そして、それらが終盤に氷解する。ミステリーを読むような気分で楽しめた作品でした。

映画監督 筒井武文(東京藝術大学大学院映像研究科教授)
映画史には、素晴らしい処女作を発見した途端、その映画作家の新作を観ることが叶わないことに失望とも怒りとも収まりのつかない感情に駆られることがある。とりわけ、その作家が困難な製作条件を乗り越えて完成させ、しかも年齢が還暦を過ぎていて、創作欲が一層の高まりを示した時期に本人にも分からない理由で去ってしまうという例は前代未聞だろう。若々しく、かつ老成した、タイトル同様の矛盾した印象を受けるその作品を一刻も早く発見することこそ、映画の可能性を信じる者の態度であり、彼と映画へのなによりの供養となるだろう。

ストーリー
カルチャースクールの油絵講師・容子は、下宿先であったテラスハウス(連棟式住宅)の大家が亡くなったことをきっかけに大家の孫・由佳里と出会い、彼女と同居することになる。容子は由佳里に特別な感情を抱くが、平穏な生活を続けるため、あくまで女友達を演じ続けるのだった。そんな容子のもとに大学時代の男友達・佐野が訪ねてくると、由佳里は次第に佐野にひかれていく。同じテラスハウスに大学生の柊子と悠輝の姉弟が引っ越してくる。やがて悠輝が不審な行動をとりはじめ、柊子は弟が隣に住む女性にストーカーまがいの行為をしていることをつきとめるが……。テラスハウスに住む2組の住人たちの「告白できない思い」が不思議に交差しながら、物語は意外すぎる方向に転がっていく。

映画『静かに燃えて』

2025年3月1日(土)より3月7日(金)
東京/池袋シネマ・ロサ にて上映

プロデューサー・監督・脚本・編集:小林豊規
出演:とみやまあゆみ 笛木陽子 原田里佳子 蒔苗勇亮 ​村上柊子 村上悠輝 金剛地武志 田口夏帆 真山亜子(友情出演)ほか

2022年/日本/89分
制作・配給/​株式会社オフィス101

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