焼失した可能性が高いと考えられる伊藤若冲「釈迦十六羅漢図屏風」。当時の白黒の図版をもとに、TOPPAN株式会社が日本美術史家の山下裕二氏(明治学院大学教授)と、荒井経氏(東京藝術大学教授)の監修のもと、デジタル推定復元を行った。

TOPPANは失われた文化財や美術品を対象として、デジタル技術を活用した復元に挑戦している。これまで、「大坂冬の陣図屏風」(東京国立博物館蔵)のデジタル想定復元や、クロード・モネ「睡蓮、柳の反映」(国立西洋美術館蔵)のデジタル推定復元などに取り組んでおり、今回、これらの復元で得たノウハウが生かされた。白黒で残された伊藤若冲「釈迦十六羅漢図屏風」の図版画像を高精細にスキャニング、子細な調査により色を推定し、特殊な印刷技法を用いることで、従来の複製絵画等では難しかった立体的な表現まで再現された。

復元された作品は、10月より「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS®(コイシカワ クロス)」のEXHIBITION ROOMにて一般公開される。

山下裕二氏(明治学院大学 教授)
「まさにデジタルとアナログの融合の成果」
この話を最初に聞いた際には、1枚の白黒写真から復元ができる、という話には半信半疑でしたが、さまざまな調査と試行錯誤をおこなった結果、私もその出来栄えに驚くほどの復元が完成しました。ひとえにTOPPANのデジタル技術と東京藝大の皆様のアナログな技術との協力による成果だと思っております。
荒井経氏(東京藝術大学 教授)
「手わざの極限をデジタル技術で再現」
12万枡という手わざの極限がデジタル技術で再現された。しかし、これは魔法ではない。それぞれの分野で研鑽してきたTOPPANの技術者たちと東京藝術大学の画家たちによる努力と協働の成果なのである。ここに結実した「釈迦十六羅漢図屏風」の存在感を多くの方々に見て、感じていただきたい。
2024年10月5日(土)より 土曜日、日曜日、および土日に続く祝日
印刷博物館 地下1階 デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS®
鑑賞料金 500円 ※印刷博物館の入場料が別途必要