井上ひさし生誕90年第一弾『夢の泪』今春上演

井上ひさしの生誕90年第一弾として、「東京裁判三部作」の第2作目となる『夢の泪』が今春上演される。

「東京裁判三部作」は、新国立劇場のために書き下ろされたシリーズで、2作目の『夢の泪』は2003年に初演された。1作目の『夢の裂け目』(01)、3作目『夢の痂』(06)とともに、「戦争」そして「東京裁判」を当時の市井の人々の生活を借りて見つめ、「東京裁判」の、そして「戦争」の真実を改めて問うた作品群。 日本人として避けては通れない硬質な問題を提起しながらも、笑いと音楽をふんだんに盛り込み、数々の名曲を生んだ。こまつ座が本作を上演するのは今回が初めて。

公演は2024年4月6日から29日まで、紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて。チケットは各種プレイガイドにて販売中。

演出:栗山民也 コメント
79年前、戦争が終わって夢のような時間がまた戻りましたが、その5年後再び朝鮮で戦いが始まり、取り戻した夢に裂け目が入り、また人々は涙を流しました。そしてその傷口は黒い痂(かさぶた)になって今に残っています。
 この東京裁判三部作は、井上ひさしさんとの間に生まれた記憶と現在の劇です。人間である以上なん度も躓き後悔を繰り返しますが、それでもこの正体の分からぬ世界や人間の在り方について、いつも考えなくてはなりません。どこで間違えてしまったのか、そのいたましい歴史の点と線を私たちは見つめ続けなくてはなりません。そして今のこの地球に起こる様々な不条理に対し、確かなまなざしを持つことが必要なのです。
この劇は、そんな現在を映します。

演出家:栗山民也



ラサール石井/伊藤菊治役 コメント
「円生と志ん生」以来、再びこまつ座井上作品へ参加できることは望外の喜びです。念願だった栗山演出初参加にも身の引き締まる思いです。
「初日への手紙~東京裁判三部作のできるまで」(最初の打ち合わせから3本の戯曲が書きあがるまでの克明な記録)を読めば、いかに作者が命を削っての執筆だったかが分かります。膨大な資料(読むだけでなくそれらをすべて書き写している!)、履歴書のような人物設定、細部に渡るプロット。
素晴らしい共演者の皆様と、井上先生のメッセージを笑いと唄にのせてお送りします。

ラサール石井::井上ひさし生誕90年第一弾『夢の泪』出演



秋山奈津子/伊藤秋子役 コメント
「キネマの天地」「きらめく星座」に続いて、今回の「夢の泪」で井上先生の作品には3度目の出演となります。楽しみでもあり、身の引き締まる思いでもあります。この作品を観客の皆さまに深くしっかりとお届けできるよう懸命に取り組んでいきたいと思います。是非、劇場でお会いしましょう!
お待ちしております。

秋山奈津子:井上ひさし生誕90年第一弾『夢の泪』出演

あらすじ
昭和21年4月から6月にかけて、新橋駅近く、焼け残りのビルの1階にある「新橋法律事 務所」。弁護士・伊藤菊治は、7 回も司法試験に落ちたものの女性弁護士の草分けで腕利きの秋子と結婚、亡父の開設した法律事務所での仕事に追われる毎日。だが唯一の欠点でもある、女性に弱いことが原因で 2 人は離婚寸前。継父を慕う秋子の娘・永子は、両親や敗戦後の日本人の行く末に不安を感じている。 そんな事務所では、復員兵で夜学に通う田中正が事務所に住み込みで働くことになるが、どうも永子を秘かに想っているらしい。永子の幼なじみの片岡健も永子宛の恋文をもって現れる。健の父親は新橋を仕切るやくざに対抗する朝鮮人組長で、どうやら重傷を負ったらしい。と、隣の第一ホテルの将校クラブで歌うナンシー岡本とチェリー富士山が乱入してきた。お互いの持ち歌の著作権を争って大喧嘩、法律事務所に決着をつけてもらおうと飛び込んで来たのだった。そんな折、秋子が東京裁判において A級戦犯・松岡洋右の補佐弁護人になるよう依頼されて事務所に戻ってくる。事務所の宣伝のため、とりわけ秋子との関係修復のため、菊治も勇んで松岡の補佐弁護人になることに。亡父の仲間だった老弁護士・竹上玲吉に細かい民事事件などを手伝ってもらうことにしたのだが、こと東京裁判に関しては、裁判そのものの意味や弁護料の問題など難問が山積みである。ついには GHQ の米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原から呼び出しが菊治にかかる。

こまつ座 第149回公演 『夢の泪』

作: 井上ひさし
演出: 栗山民也

出演:ラサール石井 秋山菜津子 瀬戸さおり 久保酎吉 粕谷吉洋 藤谷理子 板垣桃子 前田旺志郎 土屋佑壱 朴勝哲

2024年4月6日 (土) ~2024年4月29日 (月・祝)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
4月10日、18日、27日公演後にスペシャルトークショーあり

目次