劇団「芝居処 華ヨタ」が8月28日よりシアター風姿花伝にて舞台『娯楽版 蟹工船 立つる波』を上演する。原作は小林多喜二『蟹工船』。脚本は、2022年に『ナイト・クラブ』で第27回劇作家協会新人戯曲賞最終候補にノミネートされた近藤輝一が担当、演出は内田達也が手掛ける。

演出家の内田達也が主宰する芝居処 華ヨタは、「気ままに、華のある人生を 」「演劇を好きになるキッカケの場所へ」をモットーに活動している劇団。今作のチケット一般販売は8月日より。
演出家 内田 達也より 上演に寄せて
僕は、「蟹工船」という本の価値は、当時の労働者の実態を描いたことやストライキを肯定したことだけではないと考えている。95年経った今、小林多喜二の考え方や政治的思想、プロレタリアという言葉や社会主義、共産主義の是非をこの本を通じて考えることはそれほど重要でない。 だとしたら、この本から今僕らは何を見出せるか。 それは、真剣に自分たちの生活や住んでいる日本をより良い状況にしたいと願い、行動した人々の存在であり。その瞬間彼らは間違いなく世界の中心にいて自分たちの存在を証明しようと生きていたということじゃないだろうか。 発表から95年経った今、この作品を演劇として上演することは彼らの戦いの記憶に乗っかるような浅ましい行為に思われるかもしれない。しかし、その浅ましさも含めて、この作品を通じて自分たちの生きる意味を再考することができる切っ掛けを演劇で創りたい。 僕が演劇を大好きになったのは、上演されているその瞬間、劇場が本当に世界の中心にいるように感じたからだった。その感覚は、この本を読んだ時に感じたエネルギーにすごく近い。 毎日、様々な出来事が起こる中で、震災や人災、不況や戦争など、世界は苦しい状況に見舞われている。数え上げればキリがないほどに。そんな世界を見ているとなんだか自分がとてもちっぽけな存在であり、いてもいなくても問題ないんじゃないかと感じてしまう。 しかし、生きていたい。どうせ、生きるなら楽しくいたい。そのために、演劇の力や、95年前の勇気を借りて、もう一回必死になってみる。 この公演をやっているこの瞬間だけでも、僕らが世界のど真ん中だ。 それだけでいいじゃないか。


2024年8月28日 (水) 〜 2024年9月1日 (日)
東京/シアター風姿花伝
原作:小林 多喜二
演出:内田 達也
脚本:近藤 輝一
出演:荒澤守 金田昇悟 北野秀気 柴野航輝 栂村年宣 野村啓介 畑中咲菜 フランク景虎 保坂直希 本間美彩 松尾諒 矢野渡来偉